アイヌ語音声資料アーカイヴズ

千葉大学大学院 人文社会科学研究科

物語タイトル

猫の神様に育てられた少年

語り手

木村きみさん

解説

解説

028兄たちと狩りに行く
音声データ
 キ ラポッケ ポロアニオラノ アユプタリ アトゥラ ワ エキㇺネアン コㇿ、アユプタリ、
「タㇷ゚ アアキヒ クウェヘ  タㇷ゚ ネ ルウェ ネ。」
 セコㇿ ハウェオカ コㇿ クアリ パ コㇿ、クネイワ パイェアン コㇿ、ポ ヘネ アクウェヘ ポ ヘネ ユㇰ カ カムイ カ ウㇱ コㇿ、オラノ、
「ネウン テㇰ アアキヒ イキ ヤㇰ アエヤイコプンテㇰ ペ、エネ イソン ヘネ ピㇼカ ヘネ キ シリ アニ アン。」
 セコㇿ アユプタリ ハウェオカ コㇿ、ヘル イリ タクㇷ゚ キ パ  ワ、アセ ワ イワカン コㇿ、オラノ アアチャハ ソレクㇱ イヘンコッパ イエコプンテㇰ ア イコプンテㇰ ア、アウナㇻペヘ ネ ヤッカ キ コㇿ オラノ オカアン。ネㇷ゚ アエ ルスイ カ ネㇷ゚ アコンルスイ カ ソモ キ ノ オカアン。オラウン、
   ki rapokke poro=an h_i orano a=yuputari a=tura wa ekimne=an kor, a=yuputari,
   “tap a=akihi kuwehe tap ne ruwe ne.”
   sekor
[12] haweoka kor kuari pa kor, kuneywa paye=an kor, po hene a=kuwehe po hene yuk ka kamuy ka us kor, orano,
   “neun tek a=akihi iki yak a=eyaykopuntek pe, ene ison hene pirka hene ki siri an h_i an.”
   sekor a=yuputari haweoka kor, heru iri takup ki pa[13] wa, a=se wa iwak=an kor, orano a=acaha sorekus i=henkotpa i=ekopuntek a i=kopuntek a, a=unarpehe ne yakka ki kor orano oka=an. nep a=e rusuy ka nep a=kor_ rusuy ka somo ki no oka=an. oraun,
そのうちに大きくなると、兄さんたちと一緒に山に狩に行くようになる。すると、兄さんたちは、
「これは弟の弓だぞ」
と言いながら、弓を仕掛けていく。そして朝になって行くと、私の弓のほうにシカもクマもたくさん掛かっている。すると、
「弟が何をしても嬉しいというのに、こんなに狩が上手で優秀なことよ」
 と、兄たちは言いながら解体だけをして、獲物を背負って家に戻ると、おじはうなずいて大変喜んでくれ、おばも同様に喜んでくれる。そんなふうにして、何を食べたいとも何を欲しいとも思わずに暮らしていた。そして、
12
仕掛け弓を仕掛けるときに、それが誰の弓かを宣言する。それにしたがって、カムイがその弓を選んで掛かると考えられている。主人公の少年自身は何もしていないが、兄たちが「弟のものだ」と宣言することによって、弟の仕掛けた弓だということになるのである。
13
「ただ、解体だけをして」。弟がたくさん獲物を捕るものだから、自分たちは狩をしないで、ただ弟の捕った獲物の解体を手伝うことだけを仕事にする。
 キ ラポッケ ポロアニオラノ アユプタリ アトゥラ ワ エキㇺネアン コㇿ、アユプタリ、
「タㇷ゚ アアキヒ クウェヘ  タㇷ゚ ネ ルウェ ネ。」
 セコㇿ ハウェオカ コㇿ クアリ パ コㇿ、クネイワ パイェアン コㇿ、ポ ヘネ アクウェヘ ポ ヘネ ユㇰ カ カムイ カ ウㇱ コㇿ、オラノ、
「ネウン テㇰ アアキヒ イキ ヤㇰ アエヤイコプンテㇰ ペ、エネ イソン ヘネ ピㇼカ ヘネ キ シリ アニ アン。」
 セコㇿ アユプタリ ハウェオカ コㇿ、ヘル イリ タクㇷ゚ キ パ  ワ、アセ ワ イワカン コㇿ、オラノ アアチャハ ソレクㇱ イヘンコッパ イエコプンテㇰ ア イコプンテㇰ ア、アウナㇻペヘ ネ ヤッカ キ コㇿ オラノ オカアン。ネㇷ゚ アエ ルスイ カ ネㇷ゚ アコンルスイ カ ソモ キ ノ オカアン。オラウン、
   ki rapokke poro=an h_i orano a=yuputari a=tura wa ekimne=an kor, a=yuputari,
   “tap a=akihi kuwehe tap ne ruwe ne.”
   sekor
[12] haweoka kor kuari pa kor, kuneywa paye=an kor, po hene a=kuwehe po hene yuk ka kamuy ka us kor, orano,
   “neun tek a=akihi iki yak a=eyaykopuntek pe, ene ison hene pirka hene ki siri an h_i an.”
   sekor a=yuputari haweoka kor, heru iri takup ki pa[13] wa, a=se wa iwak=an kor, orano a=acaha sorekus i=henkotpa i=ekopuntek a i=kopuntek a, a=unarpehe ne yakka ki kor orano oka=an. nep a=e rusuy ka nep a=kor_ rusuy ka somo ki no oka=an. oraun,
そのうちに大きくなると、兄さんたちと一緒に山に狩に行くようになる。すると、兄さんたちは、
「これは弟の弓だぞ」
と言いながら、弓を仕掛けていく。そして朝になって行くと、私の弓のほうにシカもクマもたくさん掛かっている。すると、
「弟が何をしても嬉しいというのに、こんなに狩が上手で優秀なことよ」
 と、兄たちは言いながら解体だけをして、獲物を背負って家に戻ると、おじはうなずいて大変喜んでくれ、おばも同様に喜んでくれる。そんなふうにして、何を食べたいとも何を欲しいとも思わずに暮らしていた。そして、
12
仕掛け弓を仕掛けるときに、それが誰の弓かを宣言する。それにしたがって、カムイがその弓を選んで掛かると考えられている。主人公の少年自身は何もしていないが、兄たちが「弟のものだ」と宣言することによって、弟の仕掛けた弓だということになるのである。
13
「ただ、解体だけをして」。弟がたくさん獲物を捕るものだから、自分たちは狩をしないで、ただ弟の捕った獲物の解体を手伝うことだけを仕事にする。
×