アイヌ語方言アーカイヴス

千葉大学大学院 人文社会科学研究科

語り手情報

木村きみさん

 明治33(1900)年9月15日、北海道沙流郡平取町ペナコリに生まれる。昭和63(1988)年4月28日没。川上サノウク氏を父、モニアレ氏を母として、4人兄弟の長女として生まれる。8歳の時に母モニアレ氏を亡くし、継母としてナトク氏を迎える。サノウク氏とナトク氏の子供として、さらに3人の弟妹を持つ。アイヌ口承文芸の伝承者として知られる上田とし氏はその末妹にあたる。
 木村きみ氏は流暢なアイヌ語の話者であり、また数多くの口承文芸の伝承者として、萱野茂、田村すず子、中川裕など、大勢の研究者が同氏のもとを訪れ、アイヌ語アイヌ文化についての教授を受け、口承文芸等の記録を行っている。その功績により、1987年に北海道文化財保護功労者賞を受賞。
 木村きみ氏の語りに基づいて公刊されたおもなものを以下に紹介する。

萱野茂(1974)『ウエペケレ集大成』アルドオ
 第6話「カッコㇰ・カムイ イ・ピリカレ カッコ鳥がわたしをたすけてくれた」
 第8話「ホヤウ ウェン・カムイ イ・コイキ シソヤ・カムイ イ・カ オピュキ 大まむしがわたしを襲い、蜂の神様に助けられた」

川上勇治(1976)『サルウンクル物語』すずさわ書店
「コタンの妖刀」

萱野茂(1977)『炎の馬』すずさわ書店
「二人妻・二つの宝」「ユカㇻを聞きたいクマ」(訳のみ)

田村すず子(1979)『AYNU ITAK アイヌ語入門』早稲田大学語学教育研究所
 例文録音

アイヌ無形文化伝承保存会編(1982)『英雄の物語』
「シヌタㇷ゚カ人の妹の自叙」(萱野茂採録・中川裕訳)

アイヌ無形文化伝承保存会編(1983)『人々の物語』
「トパットゥミのウエペケㇾ」(中川裕採録訳)

アイヌ無形文化伝承保存会編(1983)『アイヌの民話 1』
「イクレスイェニシパのウエペケㇾ―トゥムンチカムイの災い」(中川裕採録訳)

エカシとフチ編集委員会編(1983)札幌テレビ放送株式会社
「キミ叔母の昔語り」(川上勇治筆録)

アイヌ無形文化伝承保存会(1984)『アイヌ文化』第9号
「<お化けの話>木村きみフチの話から」(中川裕編訳)

アイヌ無形文化伝承保存会編(1985)『アイヌの民話 2』
「雷神を負かした娘」(梗概のみ・中川裕採録訳)

アイヌ無形文化伝承保存会編(1986)『語りの中の生活誌』
「男性が主人公となる『人々の物語』から―キムンアイヌの息子の話―」
(萱野茂採録・中川裕訳)

中川裕(1995)『アイヌ語をフィールドワークする』大修館書店
 随所にエピソードを紹介。

中川裕(1997)『アイヌの物語世界』平凡社
「墓の中で育てられた少年」(中川裕採録訳:一部分のみ)
「金の小函ゆらゆら」(中川裕採録訳:梗概のみ)
「クマ神と結婚した女」(中川裕採録訳・梗概のみ)
「姉がクマを追い払った」(中川裕採録訳・梗概のみ)
「魔猫」(中川裕採録訳・梗概のみ)
「猫の神様に育てられた少年」(中川裕採録訳・一部分のみ)
「赤犬を退治した娘」(中川裕採録訳・一部分のみ)
「パナンペ陰茎をのばす」(中川裕採録訳・梗概のみ)

萱野茂(1998)『萱野茂のアイヌ神話集成』第5巻 ウウェペケレ編Ⅱ、ビクターエンタテインメント
「キㇺ タ イワタラㇷ゚ アパ 山で赤子を拾ったが」

萱野茂(1998)『萱野茂のアイヌ神話集成』第6巻 ウウェペケレ編Ⅲ、ビクターエンタテインメント
「イネウレペッウㇱペ 四つ爪のクマ」

千葉大学編(2015)『アイヌ語の保存・継承に必要なアーカイブ化に関する調査研究事業 第2年次(北海道沙流郡平取町)調査研究報告書』(萱野茂採録)
 20-2 「ウエペケㇾ『チナナサパ』ホッチャリの頭」
 20-4 「ウエペケㇾ『カウカウ ノカ オマ コソンテ ミ カムイ アオナハ ネ』霰模様の小袖を着た神が私の父だった」
 20-6 「ウエペケㇾ『イエマカアトゥサレ メノコ』もろ肌を脱いだ女」
 21-2 「ウエペケㇾ『アサハ セタネ イカㇻ』姉が私を犬にした」
 21-4 「ウエペケㇾ『モシㇼパサリヒタ ソアタイ タックス アㇻパアン』斜里の村へ借金を請求しに私は行った」
 21-6 「ウエペケㇾ『ポンニマ』小皿」

ご自宅の前にて
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