アイヌ語音声資料アーカイヴズ

千葉大学大学院 人文社会科学研究科

物語タイトル

猫の神様に育てられた少年

語り手

木村きみさん

解説

解説

021若者たちがおじいさんたちを射る
音声データ
  アコㇿ エカシ ホㇱキノ アㇻパ ヒネ、ポロ プヤㇻ  シㇰラㇷ゚ カ タ、プヤㇻ シㇰラㇷ゚ カ タ アン ルウェ ネ アクㇱ、オㇱ アコㇿ フチ アㇻパ ヒネ スイ チャペ、オンネ ワ オケレ チャペ ネ パ ヒネ,プヤㇻ シㇰラㇷ゚  カ タ オカ ルウェ ネ アクス、キヤンネ オッカイポ アエカシヒ チョッチャ、ポニウネ オッカポ アスチ チョッチャ オラノ、
「アエカシ、アスチ。」
 セコㇿ ハウェアナン コㇿ パラパラカンニケカ、
   a=kor ekasi hoskino arpa hine, poro puyar[9] sikrap ka ta, puyar sikrap ka ta an ruwe ne akus_, os a=kor huci arpa hine suy cape, onne wa okere cape ne pa hine,puyar sikrap[10] ka ta oka ruwe ne akusu, kiyanne okkaypo a=ekasihi cotca, poniwne okkapo a=suci cotca orano,
   “a=ekasi, a=suci.”
   sekor hawean=an kor paraparak=an h_ikeka,
先におじいさんが(猫の姿になって)行って、大窓の窓枠の上にとび乗った。その後、おばあさんも年老いた猫になって、ふたりで窓枠の上に並んだ。年上の若者がおじいさんを矢で射、年下の若者がおばあさんを矢で射た。
「おじいさん、おばあさん」
 と言いながら、私は泣き喚いたが、
9
家の南側にある、明り取り用の窓のこと。itomun puyarとも言う。
10
『萱野辞典』には「東側の窓の上へ屋根を少し出して葺いたもの」とあり、『久保寺辞書』には「窓の框(かまち) /~ka ta anu 窓の上に置く,窓の上框 窓の上のー寸でっぱったところに上げる」とある。sikrap「まつげ」にふさわしいのは『萱野辞書』の解釈のほうだが、家の中らそこにいるカムイを見たという描写がある場合もあり、そうだとすると、『久保寺辞書』のほうが適切だろうということになる。この場面では兄弟が家の中から射たのか、表に出て外から射たのかわからないので、どちらの解釈もあり得る。
  アコㇿ エカシ ホㇱキノ アㇻパ ヒネ、ポロ プヤㇻ  シㇰラㇷ゚ カ タ、プヤㇻ シㇰラㇷ゚ カ タ アン ルウェ ネ アクㇱ、オㇱ アコㇿ フチ アㇻパ ヒネ スイ チャペ、オンネ ワ オケレ チャペ ネ パ ヒネ,プヤㇻ シㇰラㇷ゚  カ タ オカ ルウェ ネ アクス、キヤンネ オッカイポ アエカシヒ チョッチャ、ポニウネ オッカポ アスチ チョッチャ オラノ、
「アエカシ、アスチ。」
 セコㇿ ハウェアナン コㇿ パラパラカンニケカ、
   a=kor ekasi hoskino arpa hine, poro puyar[9] sikrap ka ta, puyar sikrap ka ta an ruwe ne akus_, os a=kor huci arpa hine suy cape, onne wa okere cape ne pa hine,puyar sikrap[10] ka ta oka ruwe ne akusu, kiyanne okkaypo a=ekasihi cotca, poniwne okkapo a=suci cotca orano,
   “a=ekasi, a=suci.”
   sekor hawean=an kor paraparak=an h_ikeka,
先におじいさんが(猫の姿になって)行って、大窓の窓枠の上にとび乗った。その後、おばあさんも年老いた猫になって、ふたりで窓枠の上に並んだ。年上の若者がおじいさんを矢で射、年下の若者がおばあさんを矢で射た。
「おじいさん、おばあさん」
 と言いながら、私は泣き喚いたが、
9
家の南側にある、明り取り用の窓のこと。itomun puyarとも言う。
10
『萱野辞典』には「東側の窓の上へ屋根を少し出して葺いたもの」とあり、『久保寺辞書』には「窓の框(かまち) /~ka ta anu 窓の上に置く,窓の上框 窓の上のー寸でっぱったところに上げる」とある。sikrap「まつげ」にふさわしいのは『萱野辞書』の解釈のほうだが、家の中らそこにいるカムイを見たという描写がある場合もあり、そうだとすると、『久保寺辞書』のほうが適切だろうということになる。この場面では兄弟が家の中から射たのか、表に出て外から射たのかわからないので、どちらの解釈もあり得る。
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