アイヌ語音声資料アーカイヴズ

千葉大学大学院 人文社会科学研究科

物語タイトル

猫の神様に育てられた少年

語り手

木村きみさん

解説

解説

011おじいさんたちはありがたくご飯をいただく
音声データ
「タㇷ゚ アナㇰ イタンキ セコㇿ アイェ パ ㇷ゚ ネ ルウェ ネ。」
 セコㇿ アコㇿ エカシ ハウェアン ルウェ ネ ヒネ オラ、アコㇿ エカシ ホㇱキノ ネア オッカイポ ウタㇻ コイプニ 。アコㇿ フチ コイプニ ヒネ オラノ アコㇿ エカシ アナㇰ アオイペピ シㇼカ タ アヌ ワ、トゥ スイ オンカミ レ スイ オンカミ コㇿ キ アイネ、ソレクス イペ。アコㇿ フチ ネ ヤッカ エトゥフ カㇻカㇻ 。エトゥフ カㇻカㇻ コㇿ イペ ルウェ ネ ヒネ、
   “tap anak itanki sekor a=ye pa p ne ruwe ne.”
   sekor a=kor ekasi hawean ruwe ne hine ora, a=kor ekasi hoskino nea okkaypo utar koypuni[7]. a=kor huci koypuni hine orano a=kor ekasi anak aoypepi sirka ta anu wa, tu suy onkami re suy onkami kor ki ayne, sorekusu ipe. a=kor huci ne yakka etuhu karkar[8]. etuhu karkar kor ipe ruwe ne hine,
「これはお椀というものなのだ」
 と、おじいさんは言った。すると、その若者たちはまず先におじいさんに料理をよそり、次におばあさんによそった。おじいさんは食器を地面に置くと、なんども礼拝を繰り返してから食べた。おばあさんも鼻の下をこすった。おばあさんも鼻の下をこすって、それをいただいた。
7
この語順のまま訳すと、「私のおじいさんは先にあの若者たちに料理をよそり」となりそうなものだが(文法的にはそういう解釈も可能だが)、話の流れからしてokkaypoがkoypuniの主語であることは明白である。このように、アイヌ語は必ずしも主語が目的語の前にあるとは限らない。
8
沙流川下流域などではraymikとも言う。女性が感謝を表したり、挨拶をしたりするとき、右手の人差し指で鼻の下を左から右にすっとなでるようなしぐさをする。その際に、hapとかhunnaという声を発することもある。この意味ではetuhu kar(kar)のように所属形で表現されるのが普通で、etukarと表現されることはない。
「タㇷ゚ アナㇰ イタンキ セコㇿ アイェ パ ㇷ゚ ネ ルウェ ネ。」
 セコㇿ アコㇿ エカシ ハウェアン ルウェ ネ ヒネ オラ、アコㇿ エカシ ホㇱキノ ネア オッカイポ ウタㇻ コイプニ 。アコㇿ フチ コイプニ ヒネ オラノ アコㇿ エカシ アナㇰ アオイペピ シㇼカ タ アヌ ワ、トゥ スイ オンカミ レ スイ オンカミ コㇿ キ アイネ、ソレクス イペ。アコㇿ フチ ネ ヤッカ エトゥフ カㇻカㇻ 。エトゥフ カㇻカㇻ コㇿ イペ ルウェ ネ ヒネ、
   “tap anak itanki sekor a=ye pa p ne ruwe ne.”
   sekor a=kor ekasi hawean ruwe ne hine ora, a=kor ekasi hoskino nea okkaypo utar koypuni[7]. a=kor huci koypuni hine orano a=kor ekasi anak aoypepi sirka ta anu wa, tu suy onkami re suy onkami kor ki ayne, sorekusu ipe. a=kor huci ne yakka etuhu karkar[8]. etuhu karkar kor ipe ruwe ne hine,
「これはお椀というものなのだ」
 と、おじいさんは言った。すると、その若者たちはまず先におじいさんに料理をよそり、次におばあさんによそった。おじいさんは食器を地面に置くと、なんども礼拝を繰り返してから食べた。おばあさんも鼻の下をこすった。おばあさんも鼻の下をこすって、それをいただいた。
7
この語順のまま訳すと、「私のおじいさんは先にあの若者たちに料理をよそり」となりそうなものだが(文法的にはそういう解釈も可能だが)、話の流れからしてokkaypoがkoypuniの主語であることは明白である。このように、アイヌ語は必ずしも主語が目的語の前にあるとは限らない。
8
沙流川下流域などではraymikとも言う。女性が感謝を表したり、挨拶をしたりするとき、右手の人差し指で鼻の下を左から右にすっとなでるようなしぐさをする。その際に、hapとかhunnaという声を発することもある。この意味ではetuhu kar(kar)のように所属形で表現されるのが普通で、etukarと表現されることはない。
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