ユーラシア内陸地域には、牧畜、農業をはじめ多様な生業を営んできた多くの民族集団が居住しています。日本から地理的に決して遠くないにもかかわらず、草原、沙漠、山岳など異なる環境の広がるこの地域は、環境と文化、社会、歴史、言語の関係を研究するのに最適な地域の一つであると言えるでしょう。
中国内モンゴル地域を中心として、開発あるいは市場経済化により、この地域の環境、そして文化・社会は急激に変化しています。開発や市場経済化による問題群を研究し、解決の道筋を探ることは喫緊の課題であると言えます。内モンゴル地域を主なフィールドとして、人類学、言語学、社会学などの見地から上記のようなテーマを研究していく様々なプロジェクトを計画、実施しています。
東アジア(ユーラシア大陸の東の端に位置する中国とその近隣の地域をここでは意味することとします)には、系統の異なる多くの言語集団が存在しており、現在まで複雑な力学のもとに接触関係を保ってきました。本プロジェクトにおいては、これらの地域の言語集団の歴史を、その系統関係、接触関係を主要なテーマとして研究しています。具体的内容としては、言語学の伝統的な方法である比較法や最近の系統分析法を用いて、祖語の再建や系統樹の作成を行うとともに、地域の言語間接触についても、語彙レベル・構造レベルで研究を進めています。大学院には、言語接触を研究している大学院生がおり、漢語(中国語)と他の言語との接触を研究しています。